プロジェクト「賞道」

「賞道」とは

日本美術研究家であり、デジタル復元師の小林泰三先生(有限会社小林美術科学)が手がける新美術鑑賞活動が「賞道(しょうどう、show-do)」(※)です。

日本における実技以外の美術教育はその多くが「〇年に〇〇によって作られた」と知識主体で進められてきました。しかしながら日本美術はそのほとんどが生活用品です。
屏風は広い空間を仕切るパーテーション、掛け軸はそれひとつで部屋の印象をがらりと変えてくれます。日本人は古来よりシンプルな空間をこうした道具を差し色として使うことで季節感や個性を演出してきました。また、絵巻物はスクロールするという手による操作で初めて完成します。

こうした背景もあり、日本美術を作品と知識を結びつけるだけでは美術品たちの価値を伝えるには不十分です。保存などの観点から均一な照明のもと生活空間と切り離され、平面的な展示をせざるを得ない美術館・博物館では、どのような生活シーンで使われるもので、なぜそのようなデザインになるのかはどうしても伝わりにくい状態です。

こうした従来の日本美術の鑑賞体験に疑問をもった小林泰三先生は、2004年から本格的に新美術鑑賞運動「賞道(しょうどう)」を提唱、自身で考証、制作当時に復元した美術品を実際に参加者に使ってもらい、日本美術鑑賞を体験中心に紹介する取り組みを全国でおこなっています。

既に年月を経た作品をそのままの状態で復元し、展示する事例は多くありますが、制作当時の状態へと復元し、実際に参加者に使用してもらう体験の提供を継続的におこなってきたのは小林泰三先生ならではの革命的な取り組みです。

※「賞道(しょうどう、show-do)」は有限会社小林美術科学の登録商標です。

絵巻や掛け軸を実際にスクロールしたり、襖や屏風を開け閉めすることでデザインの意図が更に体感的に腑に落ちます
灯火が乏しかった時代の暗闇を再現してみると、作品の新しい顔や作者が狙っていたであろう効果が見えてきます
参加者同士は作品の感想を思い思いに述べほめあう(=賞する)ことによる多様な新しい知的なまなざしの発見があります

「賞道」の体験が更に充実する工夫も

イベントでは復元美術品以外に作品にまつわるさまざまな体験もあわせて提供しています。
会や作品のコンセプトにより音楽、軽食、呈茶、装花、着装体験や特別講師など、作品世界への理解が深まるような体験や、参加者同士の交流が進むような工夫もおこなっています。

また、海外のかたもお楽しみいただけるよう、現在は簡易版ではありますが配布資料を英語化したものをご用意しています。
言葉に頼りきることなく、五感のすべてで作品の置かれた生活世界を楽しみ、共に喜び、作品をほめあう体験は日本でのエンタテイメントに慣れた海外のかたにもおススメです。

次回「賞道」開催

宵闇の絵巻と祓いの宴~賞道のいろは~

夏越の祓(6月30日)を前に、かつて当たり前であったほの暗さの中で絵巻物を豪華に三種、地獄草紙・年中行事絵巻・平治物語絵巻を鑑賞していただきます。

三種の絵巻はすべて異なるタイプ。これら絵巻に登場する死者をあざ笑う鬼、人の喧騒、戦火のむごさをほぼ闇に近い照明のもとで体験・鑑賞します。当時の人が感じたであろう「ぞくり」。実際に絵巻をスクロールしながら、その産毛立つ感覚に共振してみましょう。

また、祓いの季節にふさわしく、軽食も身体がきれいになるようなマクロビオティック料理や厄落としのお菓子をご提供します。ほの暗いなかで食べることにより、更に料理に注意を向け、香りを鋭敏に感じ、味わいに集中します。精進しながら絵巻の体験の前に世界に没入する準備運動でもあります。

暗がりを恐れ、今や電気の力で不夜城を手に入れた私たち。こんな時代だからこそ、あえて電子機器ご法度の闇夜で交わされる一期一会のひそやかな楽しみを皆さんと共有したいと思います。 小林泰三先生も拠点を関西に移されるため、賞道を東京で体験できるのはこれでしばらくお休みとなります。この機会にぜひ上半期の「賞道おさめ」をしてみませんか? しばし現実から軽やかにステップアウトするこの試み。たくさんのお越しをお待ちしております。

■開催概要
日時:2019年6月25日(火)19:30~21:00
会場:むすべや日本橋まどか
東京都中央区日本橋小舟町7番10号
※参加表明のかたにはより具体的にご案内いたします。

■参加費
事前ご予約のかた 3,500円
当日 4,000円(すべて当日支払いです)

■開催内容
※19:00~19:30 通常照明 この間、皆さんには水か酒で口を清めていただきます。19:30になったら照明を落とします
・19:30 賞道とプログラムについての説明(10分)
・19:40 絵巻3種と鑑賞のポイントについての紹介(15~20分)
・20:00 祓いのおしのぎ提供開始

おしのぎと同時に、鑑賞者はひとりずつ(もしくは参加人数によっては2~3人1グループで)手燭を持って鑑賞エリアへ移動。先生とほぼマンツーマン状態でじっくり絵巻を鑑賞します。時間をたっぷりかけて三巻をご堪能ください。鑑賞後は手燭を持って降り、次の人と交代します。照明は全てLEDですので、ヤケドの心配はございません。ご安心ください。

20:55 〆の挨拶

■ご注意
・会場はかなり暗くなりますので、小学生以下のお子さまや足の悪いかたはご遠慮ください。
・当日開催時間中は原則としてスマートフォンなど、電子機器はご利用にならないようお願いいたします。

参加ご希望のかたは下記のボタンからどうぞ。
そのほか、お問い合わせは03-5542-0231(担当:こいぬまる)までお気軽にご連絡ください。

参加申し込み

小林泰三先生プロフィール

賞道主宰 デジタル復元師 日本美術研究家 小林美術科学代表

東京都杉並区生まれ。
大学時代に学芸員の資格を取得、その後も企業で復元事業に関わる。2004年から本格的に体感を中心とする新美術運動「賞道」を提唱、小学校美術教育から社会人講座まで幅広く活動中。その軽妙な解説には全国にファンも多い。
NHK「日曜美術館」「歴史秘話ヒストリア」、BS-TBS「にっぽん!歴史鑑定」など、メディアにも多数出演。
著書に「日本の国宝、最初はこんな色だった」「誤解だらけの日本美術」(光文社新書)などがある。

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